「おい、主役はどこ行ったんだ」

レストランに着くなり
上司がジンに聞いた。

ジンは、えっ!という顔をすると
あたしに聞く。

「あいつ、みんなに言わないで帰ったの?」

「は!?帰った??」

上司とジン、二人から視線の視線が痛い。

「え・・あ・・・。
何も言ってなかったですか・・?」

上司の人はあたしの質問には答えず
あたしを見据え続ける。

耐え切れずにあたしは口をまた開く。

「・・すみません。
急用を思い出したらしくて
帰りました・・・・」


一瞬とも永遠とも感じるような
もの凄くきまずい沈黙が走る。


「・・そうか。
ま、一言言ってくれても
よかったと思うが。
しょうがない。
とりあえず中に入ろう。」

やっと口を開いた上司がレストランに入り
あたしはガクッと肩を落とした。

「ごめんねジン。
うちのイトコのせいで・・。」

「いいよカナ。
さ、俺達も行こう。」


ジンは

それでも優しい。


もう、ポパイのバカ。
本当に礼儀や作法を教えないと
これ以上人と会わせられないよ。

帰ったら叱らないと。
そう思いながら
あたし達はレストランに入って行くのだった。