魅惑のキスネコ!【完】


折れた鼻の痛みに
ぐったりとしているジン。

車に乗ってから
一言も発しない。


「大丈夫?」

あたしが聞くとジンは薄目でこっちを見る。


「ほんっと痛い・・」


「あはは!いてぇよなぁ。
分かる分かる。」
運転をしてくれている男性が笑った。

「ジンは格好付けだからなぁ。
嫁さんと俺だけになって
やっとへたれたか。」

バックミラー越しにこっちを見る。


「え、ジンって会社では
そうなんですか?」

あたしは即効で彼に聞き返した


「あぁ、今日はジンのファンも居たしなぁ」

「ちょっ、鈴木さん。
嫁の前で何言ってるんですか。」
ジンが呻きながら話を遮った。

え、なになに。
すっごく気になるんですけどっ。

運転してくれている彼は
鈴木さんというらしい。
さっそくその名前を使う。


「鈴木さん。
どうぞ続けてください。」

「おいカナ」
勘弁してくれと言わんばかりに
ジンがあたしの腕を掴む。

そんな様子に鈴木さんは
バックミラー越しに笑った。