「おし、いいか
とりあえず君はボールだけを見ていればいい。
それ以上は考えなくていいからな。
もしボールが来たらさっき自分で言っていたように走れ。」
「わかった。」
「こいつ、100m10秒台らしいから
どんどんパスしていいみたいっすよ」
さっきの若い男の子が茶化す。
「あぁ、問題ないよ」
ポパイも平然と言った。
「それは頼もしいな。
じゃぁ、すぐ試合再開だ。」
上司の合図でポパイはメンバーに混ざり
グラウンドへと走っていった。
「あのぉ。大丈夫ですか?」
女の子の声がしてあたしはジンの方に振り向く。
「あ、君達。
うん、大丈夫だよ。多分・・笑」
ジンが痛々しく微笑むと彼女達は安堵の表情をした。
「よかった。
いっぱい血が出てたからびっくりしちゃいました・・」
彼女達は口々にそう言うと
ふとあたしを見た。
あれ、この人たちって
さっきあたしを凝視していた子達だ。
「はじめまして、いつもお世話になってます。
営業部の・・旦那さんの部下の坂下です。」
一人がぺこっとお辞儀をする。
「桃山です」
「林です」
「あ、どうも。
お世話になってます」
あたしも慌てて頭を下げた。
新卒だろうか。
若くて初々しい。
