「ねぇ、まだ見てるよ」
アリサがあたしにそっと耳打ちする。
「う・・ん」
視線を移さずに返事だけする。
「本当、なんなんだろうね。
感じ悪・・。」
はぁ・・本当なんなんだろう。
”ピピーーーーッ”
あたしたちの会話はけたたましい笛の音に遮られた。
グラウンドの中が騒がしい。
誰かが怪我した雰囲気だ。
ウォーターボトルやアイススプレーをもった人たちが駆け寄る。
「おい、ジンじゃん」
ポパイの一言であたしは一瞬血の気が引く。
え!ジン!?
目を凝らすと、倒れているのは本当にジンだった。
「っ!!」
血が出てる。
あたしは慌ててベンチの方に走りよった。
「あ、ちょっとカナ!荷物っ・・・!」
後ろのほうでアリサの声がしたけど
あたしを止めるには至らない。
