ガラッと織海くんはドアを開ける。
腕をぐいっと引っ張られ教室の前に立つ。
私はそのまま…一歩中へ踏み出す。
「っ……………」
クラスの生徒の視線が、私に集まる。
「あれって、沢沼さんじゃない?」
「あー、そうかもね!」
よかった、”あのこと”を知ってる人は居ないみたい…

「沢沼さん!?」


『B組の前田さんには気をつけて…』

なんでいるの?なんで…なんで?
「なーんだ、全然顔見ないから、死んだのかと思ってた。」
「この通り、生きてるけど…」
怖くて声が震える、貧血で倒れそう。
手汗がすごい……でも、大丈夫。
私には、華恋ちゃん、織川くん…
そして織海くんがいるんだ…
「私、あんたのこと絶対許さないから…」
「………そう」
「一生、恨み続けるから…」
「………………そう」
唇を噛みしめる。
耐えろ…耐えろ優真………っ
「あんたが……死ねばよかったってみんな言ってる」
「……うん、知ってる………」
「康太も言ってる。」
「っ…………………」

『好きだよ優真…』
『愛してる』

「あんな嘘つき…もう知らな…」
「まだ好きなんでしょ?」
「っ…………」

あの背中、忘れられない。

あの背中、忘れたい。

あの温もり、忘れられない。

あの温もり、忘れたい。

「ほら、何も言えない。
いい加減やめなよ、康太もほんと恨んで……」
「………さっきから聞いてりゃ、ざけたこと言ってんじゃねーよ!」
後ろから大きな声…
振り向くと、華恋ちゃんと織川くんが
織海くんのことを必死に抑えてた。
「そーだそーだ!」
「前田さん性格悪かったのね…ふふっ」
「な、なにあなた達、沢沼さんの味方するの!?
やめなよ!こいつ人殺しだよ!?」
人殺し。
その言葉で何度自分の首を締め付けてきたか…
でも、もういらない言葉
私は、連れ出してもらった
自分で歩けるようになってきた。
「人殺しだろーと少なくとも俺達にはカンケーねぇよ!」