その日1日、あたしは2人と全く会話を交わさず、ただ仕事だけをこなした。


どうせ明日にはクビだ、それも向島先輩と一緒に。


頑張って入社して2年、何事にもメゲずにやって来た。


全部がパー、おしまい。


この2人のおかげで、そして、先輩のせいで。


もうダメなんだから敬介と一緒になって、平和な家庭を作ろう。


芸人の妻として、彼を支えるのも悪くない。


こんなに近くに居るのに、話す事も出来ない関係なんて止めて。


浮かない顔で1人、スタジオの隅に立っていると敬介が視線を投げて来る。


ダメだよ、見ちゃ。


こんな顔してたら、心配させるよ。


「大沢さん」
「はい、なんでしょうか鳴瀬さん」
「あの、明日少し時間をいただけますか? 」
「はい」


明日で仕事も終わりだからいいか、もう。


「後で連絡します」
「よろしくお願いします鳴瀬さん」