「…じゃ」 突っ立ったままのあたしに そう、言葉を残した彼は 雨の中へ消えていこうとする。 『あ、待っ…』 なぜだか無性に、引き止めたくなって。 だけどその声は、雨音に消されてしまう。 『あのネクタイ…特進クラス…?』 視力だけは自信があって あたしはしっかり、目に焼き付けていた。 特進科の証 ネクタイに刻まれた ハヤブサの刺繍。 〝…なに?〟 一瞬だけ見えた瞳は 蛍光灯に反射して、キラッと光った。 うつむいていたのは それを隠すため。 …なんて、深読みしすぎかな。