Bitter syrup~ほろ苦くて甘い君~


『結衣…雪…』




冬休み間近。


暖房が無意味なくらいに冷え切った教室は

相変わらず騒がしい。




「…え、なに?
 小さすぎて聞こえない」


『ゆ、雪だよ…』


「…あんたそろそろ命日だっけ?」




げほっ

咳き込んだ風圧で、
数年ぶりにつけた紙マスクが動く。




『…そうかもしれぬ』


「え?…ああ、はいはい」




なんとかあたしの声を拾ってくれた結衣は

適当に反応すると、
手元の雑誌に目を戻した。




『あ゛ー…頭がぼーっとする…』


「傘ないからって
 あのゲリラの中突っ走るからでしょ。

 ちょっと待ってればいいものを」




完全他人事という、冷めたこの子は

坂本 結衣。


あたしの友達なのだ。これでも。