混乱した顔の桐谷と、 勝ち誇ったような笑顔の私。 偶然居合わせて聞いてしまい立ち止まった沢山のオーディエンス。 私は混乱したままの桐谷にずかずかと近寄ると、 桐谷の首に手を回し、背伸びをして唇にキスをした。 チュッと触れるだけのキスだけど、 この大勢の人が見ている仲での醜態って事で勘弁してほしい。 すると我に返った桐谷は、 キスの後に一歩下がった私をがっと自分の腕で捕まえると、 その中に閉じ込める。 「雪乃雪乃雪乃雪乃雪乃」 私の頭の上で名前を呼び続ける桐谷の声は掠れていて。