此処から目線を持ち上げてみると、確かにいつもは此処を見下ろしている窓が見える。

「あいちゃん、いつもここでとーしゃまみてる」

「俺、を…？」

思わず愛梨の顔を振り向くと、愛梨は恥ずかしそうに視線を泳がせた。

「…小さな子には、隠しても分かっちゃうのかな…」

「え？」

「わたし、いつもあの窓から周さんが外を眺めるのを知ってたから…だから此処に良く来てたんです」

愛梨をあの部屋から見掛けるのは、偶然ではなかったのか。

「けど何で、俺のこと…」

「…京くんから聞いたんでしょう？」

「でも、子供の言うことだろっ…」

愛梨は目を閉じてゆっくりと首を振った。

「上手く隠してるつもりだったんですけど…全然隠せてなかったのかな」

「！それじゃあ…愛ちゃん、君は…っそんな、いつから……」

俺は全く、気が付かなかった。

だったらもしかして、君に今までずっとつらい想いをさせていたんじゃないか？

君は一体どんな気持ちで、都との結婚や京の誕生を祝福してくれていたんだ。

「…わたしみたいな身分の低い娘は、本当ならこんな想い打ち明けることも出来ないのに」