机に突っ伏して顔を横に返すと浅川芽有が見える。


それは俺の知っている浅川芽有ではない。

しかしクラスメートも担任も、誰もそれに気付かない。

ひとりの女の子が入れ替わってしまった。
それがたまたま俺の好きな女の子だったなんて
納得できるものか。


それとも、十日会わないでいるうちに、俺は頭の中で浅川芽有を勝手に理想化していたのだろうか。

記憶を上書きして、実物と誤差が生まれてしまったのだろうか。


「谷田、浅川ってあんな顔してたっけ」


俺は試しに前の席で漫画を読んでいる友達に聞いてみる。
谷田は漫画から顔を上げた。


「なんだソレ。他にどんな顔だよ」


谷田は鼻で笑うと漫画に視線を戻す。



「小諸くん、ちょっと」


不意に呼ばれ、俺は勢い良く振り向いた。

ニセ浅川が隣のクラスの志村という男子をともない立っている。


俺は志村の顔を見て、ぎくりとした。
こいつも浅川を好きだったはず。


「私、小諸くんと付き合ってるの」