(怖い・・・助けて・・・)


桜の心の中でその言葉がたくさん生み出されていく。しかし、進はそんな桜の気持ちを無視するように、顔を近づけキスをしようとする。そんな時だった。


「桜!」


桜の視線の先には城島が立っていた。
城島は、二人のいる方へ走って向かうのだが・・・


「やっと来た、兄貴♪」


進が、桜を抱きしめ、離そうとはしない。
そして、桜に顔を近づけると「俺も、桜ちゃんのことが好きになったかも(笑)」と言って、桜の頬を自分の顔ですりすりし始める。


「いい加減にしろ、進!」


城島の怒りがついに頂点に達する。二人のところまで走ると、その勢いで進の顔に思いっきり拳をねじ込んだ。
呆然とする進。そんな進を見下ろすように見た城島は「二度と桜に手を出すな!」と言って桜の手をとってその場を後にした。


「誰も・・・俺のことなんて・・・」


進はそういいながら立ち上がると、イライラした気持ちを抑えるように歩き始めた。

数分後・・・

バンッ!

「ぃっ・・・てぇな!」

進は誰かにぶつかった。
振り向いた先にいたのは、中世ヨーロッパを思わせる様な、すその広がった黒色のワンピースを着た女が倒れていた。その姿に動揺した進は・・・


「大丈夫か?」


と言って、彼女を起こした。


「ありがとう・・・ございます。」
(この人・・・素敵な方・・・)


彼女はそういうと、静かに礼をして進と反対の方角へと歩いていった。進は「何だあの格好?」と小さく呟きながら、ふらふらと街の中へと消えていったのだった。