そのとき、側にやってきた雅彦が声をかけてきた。 「おい、あの窓際の席に座っているやつ、さっきからおまえのことをちらちら見ているぞ」 「え?」 目だけを動かして見ると、窓側の一番前の席に座っている男子生徒が、さりげなくふりむいたふりをしながらこちらを見ていた。 その生徒の名前は、沢野洋。クラスの中では、比較的おとなしい人間だ。 何か用かしら? 見つめ返すと、沢野はあわてた様子で前に向き直った。