Witch and Vampire ―恋物語―

医者はテラに何かを指示すると、桶を持って部屋を出ていった。

医者は俺が落ち着くまで待つと、

「ナイト君。大丈夫。ただの風邪だよ。この後点滴を打ってもらうから、一日は安静にしていて。お腹は空いていると思うけれど、吐くくらいなら食べないほうがいいと僕は思うよ。」

お腹の中は確かに空っぽだが、体が疲れ切っていた。

点滴とは針から体に必要な栄養分を送るためだと説明されたので、明日には良くなっているだろう、と医者は言った。

「魔力を使い過ぎたっていうのと、大量出血、毒っていうので体がびっくりしちゃったんだね。きっと。」

体がびっくりした、で済まされるのだろうか。俺の体は。

「それじゃ、あとはテラさんがやってくれると思うよ。」

そう言いながら立ち上がる。

「ありがとう、ございました。」

笑顔で手を振りつつ、立ち去ろうとする。

と、ここで何かを思い出したようだ。

「明日になっても良くならなかったら、僕のとこ来てね。」

どうやら薬のことらしい。

「あと、彼女には何も問題はないから、安心して。」

そう言うと、出て行ってしまった。

彼女とは誰のことだろうか。

少し経って、テラが戻って来た。

透明な液体が入った袋のついたスタンドを俺の隣に置いた。

そして、小さな袋に入っていた長い針をつけると、俺の袖を捲り、ブスリと刺した。

「いっつ!」

「少し経てば、痛みはなくなりますよ。」

針をテープで固定しながらテラが言う。

「いくらなんでも、何も言わずに指すことはないだろ。」

「主は注射がお嫌いでしたから、何も言わずに刺したほうがいいかと思いまして。」

たしかに、知らない間に刺された訳ではないし。

テラの言い分に納得してしまう俺だった。

「何かお持ち致します。」

「あ、じゃあ悪魔に関する本を頼む。」

「承知しました。」

俺はテラの後ろ姿を見送ると、自分の腕を見た。

見事に血管に刺さっている。

テラは看護師も出来るのではないだろうか、と真面目に思った。