Witch and Vampire ―恋物語―

と、ここで体に異変が起こった。

食道を通り、胃に行くはずのスープが、突っかかったかのように逆戻りしてきた。

突然のことに対処しきれなかった。

俺は飲んだスープを胃液と共に吐いた。

「げふっげふっ!」

「あ、主!大丈夫ですか!」

背中をさする召使い。

吐いてしまったところがお盆の上だったため、ベッドが汚れることは無かったが、せっかく作ってくれたスープが台無しだった。

「医者を呼んで参ります!」

召使いは俺の口を素早く拭くと、お盆を持ち、部屋から出て行った。

「・・・胃が、ムカムカするな。」

また数分後、医者を連れてテラがやって来た。

「主、どうなさいましたか。」

「いや、スープを戻しただけだ。問題、無い。」

口の不快感は残るが。

テラは心配そうに俺の顔を見ると、医者に、お願いします。と頭を下げた。

医者は昔からお世話になっている人で、こちら側に住んでいる。

が、腕が良いので、人間にお願いされることもあるらしい。

自分を頼りにしてくれるのが嬉しい、と医者は言っていた。

丸いメガネをかけた、全体的に丸々としたおじさんだ。

実は魔術師だったりする。

医者はベッドの脇に椅子を置くと、俺の服を胸まで上げ、聴診器を当てた。

今気づいたが、体中包帯だらけだった。

次に口を開けるよう指示をされたので、口を開ける。

平べったい木の棒で舌を抑え、喉の状態を魔法で光をつくり、見る。

テラがいつの間にか桶と水瓶とコップを用意していた。

俺は口を濯ぐ。

「ナイト君。水を飲んでもらっても構いませんか。」

俺は口に含んでいた水を桶に吐き出すと、もう一度水を少量飲んだ。

しかし、また胃が入れてくれない。

また吐いた。

「がふっがはっ!」

俺は桶に思う存分吐いたあと、口を拭き、とりあえず口を濯いだ。