ゆびきり

「大人二枚ください」


詠士は私の気持ちも知らず、昨日と変わらぬ態度でそういった。


「はい、二枚で三千円になります」


私はショックをうけながら、今は仕事中なのだと自分に言い聞かせ、接客をした。


でもなかなか笑顔は作れない。


作業する手も遅くなりながらも、お金を受け取り、チケットを渡した。


「サンキュー、頑張れよ」


そういって去っていく詠士を目で追ってしまう。


すると、詠士のいきついたところにはケバイ女が待っていた。


「おっそ〜い」


バカっぽく女が言うのが、遠くにいても聞こえてきた。


私の心はさらに押し潰されていき、苦しさが増していった。