ゆびきり

「詠…士…」


そう、声をかけてきたのは昨日初めてあったばかりの詠士だった。


「日和、ここで働いてたんだね」


「名前、覚えててくれたんだ…」


私は嬉しくなり、今仕事中だということを忘れていた。


「大切なお客様の顔と名前くらいちゃんと覚えてるよ」



お客様…。



そっか、そうだよね。


詠士にとってはただの詩を買った客としか印象がないんだ。