ゆびきり

「私、詩をいかせる仕事したいな。いろんな気持ち伝えたい」



「いいじゃん、ああやって駅でやってればスカウトも夢じゃないんじゃねぇの?」



「そうかな?そういえば、詠士の詩は?見てみたい」


「俺?俺も書いてるけど、人にみせてないしな」



「じゃあさ、今度一緒に店やろうよ。それで詠士の詩もいろんな人にみてもらうの」



梨由は目を輝かせながら言った。



詠士は自信ないから嫌だとは、言い出せない雰囲気だったため、曖昧な同意の仕方をした。



「あ~、まあ機会あればな。それより飯くうぞ」



「明日からだからね!今日は材料買ったから私が作るの」



今まで梨由が料理をつくるなんて、一度もなかった。

詠士は不安げにキッチンに立つ梨由を見つめた。



このまま、ずっと幸せに二人でいるのだと誰もがおもっていた。



駅でいつも二人は一緒に詩を書くようになった。誰もが認める詩人カップルだった。



そんな中、梨由は自分の家に戻ると、両親が自分のことを待ち構えていた。



「珍しいね、お父さんとお母さんが一緒にいるなんて」



「学校も辞めて、不良少女が何偉そうに」



父が言った。



「私、好きな人いるの。その人とずっと一緒にいるつもりだから」



梨由は睨むように両親をみながらいった。



「あなたの結婚相手なら気にしなくていいのよ。彼があなたを駅でみかけて、気に入ってくださったんですって」



母は梨由にお見合い写真をみせた。



「嘘、私はお客さんの顔は絶対覚えているもん!こんな人きたことない」



「梨由、あなたには詩の才能あるのよ。チャンスじゃない?お父さんも気に入ってらっしゃるし」



「そうだぞ、梨由だってずっと詩をかいていられる」



梨由は両親にこれ以上話しても無駄だと思い、走って家をでていった。