『ごめんなさい』 聞こえない声で口を動かした。 伝わる対象がいないことは分かっていたけれど、謝りたかった。 「葉君、いいんだよ。無理して言わなくて」 ふいに、自分の体が抱きしめられるのを感じた。 気付いた時には、彼女ととても近い距離にあることに気付く。 年上なのに、年下の少女に為されているこの状況に「なんて恥ずかしいんだろう」と思った。 けれど、「いいんだよ。…誰も悪くないんだよ」と諭すような口調で言う彼女に「全てを任せてしまいたい」とも思う。