“親がいない” その言葉は思った以上の複雑さと鋭利さを兼ね備えて、僕自身の胸に突き刺さった。 それと同時に「一緒なんだ」、と同族一色めいたものを感じたのも事実で、さっき感じた陰りもそれによるものなのだろうか、と思い至る。 『僕もです。僕も両親がいません。3歳の時に、二人とも死んでしまったんです。』 僕は自分自身が書く文字を、まるで他人事のように眺めていた。