「…どうして?」 「筆談するから」 彼女は早々と言うと「葉くん、こっちこっち」と足早に歩いて行ってしまう。 一瞬、少年と目が合う。 どんな表情を浮かべるでもなく無表情な彼は「…ああ、そういうことか」と小さく呟いた。 彼女は木目調の扉をくぐり抜け、僕もそれに続く。 中に入ると、それ程大きくない部屋の中心には茶色の小さな机が置いてある。その周りにはテレビや、生活雑貨などが細々と置いてあるのが見受けられた。