『瀬乃葉』 「…せの、よう?であってる?」 『うん』 安定感の悪い自分の掌の中で書かれた文字はとても綺麗とは言えない。 早く書かなければ、という謎の思いがあって素早く書いてしまったことも要因の一つだった。 けれど、彼女は僕の書いた文字を真剣に受け取っているように見えた。 何より、声の出ない僕を前にしても普通にしてくれていることが嬉しかった。