『…あの、』

相手から見れば、僕は口を動かしているだけだ。



「あ。君、もしかして…喋れない?」



彼女は核心を突いた。

そのことに驚きもしたが、それよりも「分かってもらえた」という安堵の方が大きい。



今度はこくり、と大きく頷いた。



「じゃあ、これ。使って?」



彼女はどこから取り出したのだろう、花柄のメモ帳とペンを僕に手渡すと、「名前は?」と尋ねてきた。