夏の幽霊





あれから数日が過ぎ

あの時のことは夢だったのだと、安心するような、でも少し寂しいような気持ちを抱えて毎日を過ごしていた


日差しが眩しい、空いっぱいに絵の具をぶちまけたような純粋な青が広がる


木々の若々しい緑でさえも目に痛い


ぼくは、森に少し入ったところに小さな川が幾つか流れ込んで、透き通った小さな水溜りになっているところを見つけた


そこは、水辺ゆえの涼しさと、周りを木々に囲まれているため、薄暗く居心地が良かった

さらに、水溜りの真ん中には木々の間を縫った太陽の光が清らかな水に反射し、まるで緑色の宝石のように輝いていた


ぼくは座り心地のいいお気に入りの岩の上に腰を下ろし、おばあちゃんに貸してもらった釣竿に、近所のおじさんからもらったよく釣れると噂の気味の悪い虫を、落ち葉でつまんで一生懸命に釣り針につけていた


ぷちんと小さく音がして、釣り針に虫がくっついた


「うえぇ」


何度やっても気持ちが悪い、おじさんの息子はこれを素手でしかも器用につけるのだそうだ


ぽちゃんと、キラキラ光る水の真ん中に針を落とした



そのままその水面のきらめきをただただぼぅっと見ていた


蝉の鳴く声が遠ざかり、木々の葉擦れの音がやけに耳にこだまする









「そんなとこに針入れても釣れんよ」







「うわぁっ!!」









ぼくの神経が小さな音に集中し、不思議な緊張感を持っていたところに、突然声をかけられた


当然のごとくびっくりする




どこかで魚がはねた




「しぃっ!」



僕に声をかけた誰かが僕の口をふさぐ、ひんやりしていて気持ちの良い手だった



その手の主を見ると、自分と同じくらいかもう少し上の男の子だった



「大声出したらだめだ、魚がにげっぞ」



すこぅし日に焼けかけた肌、八重歯が印象的で、目が大きくてその瞳から何か強い力のようなものを感じる

格好は黄ばみ始めた肌着に短パン姿だったが、どこかいまいちしっくりこない



「……………うん」



しばらくしてから手を離してもらいようやく声が出せる



「おめーさん、見ない顔だな、こっちに引っ越してきたのか?」


強い瞳が細められ、人懐っこい笑みが浮かぶ