夏の幽霊



白蓮は、心なしか、少しだけ嬉しそうに、部屋の奥の方に向かった

『睡蓮様、俺が弱いこと知っておられるでしょう』

「知っておるがそれがなんじゃ?」

『はぁ』


しばらくすると、白蓮が大きなお盆に何本もの瓶を積んで戻ってきた


『はい、これが例の酒で、他にも適当に日本酒と、つい最近手に入った葡萄酒なるものも持ってきました。あと、つまみを少々、そうだ、坊主、お前はジュースだ』


白蓮は、説明をしながら瓶をどんどん白いテーブルに置いていく

そして、唐突に、オレンジ色の液体が入った瓶を投げてきた

おっとっとと言いながらなんとか落とさずにとった


白蓮は着物の懐から栓抜きを取り出してほれと投げてよこす

今度は落としてしまった


そんなことは気にせず、白蓮は瓶の栓をどんどん抜いていく


そこで僕はおかしなものに目を奪われた


「ねぇ、チヨ、これ、蛇入ってない?」

「あぁ、マムシ酒だろう」

「ま、マムシぃ!?」

「このなんとも言えぬくせが旨いんじゃ」


話を聞いていた睡蓮がちょいっと口を挟む


『俺は嫌いだ』

紅蓮がぼそっとつぶやく

『俺も、清酒の方が好きかな』

白蓮も苦笑いしながら反論する

「お主らは勝手にそこのを吞んでいろ、私は独り占めじゃ」


上機嫌でマムシのどっぷり使った茶色の液体をガラスのコップに注ぐ


「チヨ、お前さんは何を飲む?」

「私にもくれるのか、じゃぁちょっとその葡萄酒とやらを」

「チヨは未成年でしょ!だめだよ!」

「阿保が、幽霊に年齢もクソもあるか」

「うぅ、それは………」

「もう死んでるんじゃから、もう死にようがないんじゃよ」

「はぁ、まったく」


僕の呆れたため息と同時にチヨは、何やら足の長い、ごく最近行ったデパートに売っていた【わいんぐらす】とやらを持った


「そんなのまであるんだ…………」


かなり高額だった気がするんだけど


「雰囲気出るだろう」


ふふん、と満足げにチヨは透明なグラスの中に入っていく濃い赤紫色の液体を見ている


「良い匂いがするのぅ」


僕もそこら変にあったコップにジュースを次ぐ、どうやらみかんジュースのようだ


「では」


『『「「「かんぱーい!」」」』』