『迷信ですと!?私がこんなにも心配しているのに!!』
「心配せんでも私がそんじょそこらの妖に負けるとでも思っておるのか?」
『そんな滅相もない!ですが、祟りは別ですぞ』
「ほんに、白蓮は頭が固いのぉ」
『睡蓮様が柔らかすぎるんです!』
言葉のキャッチーボールならぬデッドボールである
ものすごい勢いで狐……もとい白蓮がまくし立て、睡蓮がうまいこと上げ足をとっていく
『その辺にしておけ、白(しろ)』
低い声がゆったりと響いた
『む?紅(こう)か』
白蓮の声に答えるかのように寝台のそばの闇から一人の男が姿を現した
背が高く、すらっとした体型の男、着物は黒地に赤の蓮の花が咲いているものだった
髪の毛は漆黒の闇の黒、瞳は血のように赤い、顔は、東京の女子達がみたら騒ぎだしそうなほどの美丈夫だった
「はぁ、やっと来たか紅蓮、白蓮に捕まってしまって、大変だったぞ」
『そう思うのでしたら上げ足を取ることをやめた方が良いかと』
「向きになって怒る白蓮が面白くての」
『否めません』
『てめぇ!紅!!何言っておる!』
『俺は本当のことを言ったまでだ、そういえば白、いつまでそんなちまっこい格好をしている』
「そうだぞ白蓮、お客様の前じゃし、第一私の前だ」
『普通逆じゃ………』
理不尽なほど怒られている白蓮は、しょんぼりをうなだれる
するとその体を真っ白な煙が包み、大きくなっていく
煙のなかから見えたのは一人の青年だった
紅蓮より身長は少しだけ低いがそれでも僕にとっては見上げるほど高い
着物は白地に青の蓮の花、髪の毛は完璧な白、白磁の肌、目の覚めるほど青い瞳
一見して、利発そうな美しい顔立ち
しかしどことなく…………
「なんか、白蓮はヘタレっぽいね」
僕がボソッとつぶやいた言葉に一瞬の沈黙が訪れる



