夏の幽霊




薄暗く、両側に壁のようなものがあったが、それは光を反射しているようだった


「鏡?」


そう気付いた途端、急に周りの景色が見え出した


鏡の迷路

まさのそのようなところだった


驚いた顔の僕が、少なくとも5人は見える


「すごい」


当時これほど精度の良い鏡はこんな田舎ではそれほど見ることができなかった

だから、出てきたのは、正直に感嘆の声だった


しかし


『幽霊ガ見エルンダッテ』

『アリエナイ、頭オカシインジャナイノ』



どこからか小さく響いてくる、小さい子どの声

何処かで聞いたことがあるセリフ


心臓の動悸が激しくなる


頭から血の気が引き、視界が暗くなりかける





『ウソツキ』









そのセリフが聞こえた途端
あたりに一瞬の静寂が訪れた




『ウソツキ』『ウソツキ』『ウソツキ』
『ウソツキ』『ウソツキ』『ウソツキ』




しかし次の瞬間には、嵐のように言葉が降り注ぐ


両手で耳を塞ぐ

しかし、音は僕の手をすり抜けてさっきよりも大きく響いてくる

膝をおり、地面に額を着く



「僕は嘘なんかついてない」
「僕は嘘なんかついてない」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」



ぶつぶつと呪文のように言い続ける僕

おかしいと思っているけど
体が、頭が、喉が

止まらない


恐怖に体を震わせてただひたすら謝り続ける








『ナカナイデヨ』




突然響いた甘い声
しかしその声は、底知れない執着と悪意を孕んで僕に語りかける