「それからだよ。彼が私の部屋に現れるようになったのは。」
ひゅう…ひゅう…って風音が聞こえて。
森の孤独。
昼と夜の狭間。
刹那の時間に。
彼は私に何かを伝えようとするけど。
伝わらない。
溢れ出す思い。
だからマキは、切なくて、いつも彼にやさしいキスをあげるの。
彼が光の中に、消えてしまう前に。
「マキ…」
「マリ姉…だから…」
マキは、もうすぐ結婚する。
私は私の選んだ男と、幸せになるの。
「あなたには、あなたの、幸せと未来が。私には、私の、幸せと未来が。」
マキはいつだって、マリ姉の幸せを願っている。
「…ありがとう。」
マリ姉は、愁いを帯びた笑顔を見せる。
マリ姉が、これからどんな未来を選択するのか。
誰にもわからない。
未来は彼女の手の中にある。