マリの世界が、一瞬止まったような、気がした。
「…知ってたの?」
「うん…。」
マキは、いたたまれない様子で俯いてしまった。
何故だろう?
自分だけの宝物を、他人に見つけられた気分。
幼い頃、校庭に埋めたはずのタイムカプセルを、勝手に掘り返して開けられてしまったような…。
ドキドキした。
お気に入りのクラッチバッグから、細身のタバコを一本、取り出した。
気分を落ち着かせるために。
タバコに火を着ける。
一呼吸、おく。
「悪霊退治でも、してもらえばいいんじゃない?」
皮肉を込めて、笑って言った。
「沼は、ずいぶん前に埋められてしまったんだよ。マリ姉が街に出て行ってから…」
タイムカプセルを、たたき壊された気がした。
「事故があってね。街から来た子供が、何人も沼に落ちて…溺れて…。沼の水を抜いても、死体は見つからなかった。」
その子達も、彼に恋をしたのだろうか。
あの美しい、永遠の存在に、恋を…。