…ひゅう…ひゅう…って風音が聞こえると、マキは、ぼんやりと目を覚ます。
昼と夜が交差する、狭間の時間。
森はまだ、目を覚ましてはいない。
まだ夜が明けきらぬ、深いブルーとひんやりとした空気に包まれた部屋の片隅に、マリ姉が愛した少年が佇んでいる。
マリ姉が愛した少年は、今、私に会いにくるの。
マリ姉が愛した少年は、今、私を愛してる。
会いにくるわ。
毎日、毎日。
晴れの日も、雨の日も。
かつてのマリ姉がそうしたように。
だけど彼が私を愛しているのは、私の透して、マリ姉の面影を見ているからよ…。