昼と夜が交わり、空が深いブルーに染まる、その一瞬だけ。
彼はこの世界に存在できるのだと知った。
闇が完全に落ちれば、彼は夢のように消えてしまうの。
なんて、儚い…
彼と言葉、通わせる事もできず、表情だって少ない。
名前も知らない。
だから私は、彼を「お兄ちゃん」って呼ぶ事にした。
そして、彼の前では、なるべく笑顔でいることにしたの。
毎日、毎日。
晴れの日も、雨の日も。
夏休みの間中、彼に会いに行った。
言葉は交わせなくても、彼の側にいるだけで、心が穏やかになれた。
寄り添い合うだけで…。
いつまでも、この時間が永遠に続けばいいと、何度も思った。
そう、いつまでも、子供のままでいられたら。
穏やかな、少女のままで、いられたら…。

緑の森につつまれながら、この沼のほとりは、誰にも邪魔されない。
私がきっと、そっと、森の奥に隠した、何かとても美しいもの。
永遠の少年との、初恋の思い出…