彼はゆっくりと振り向いて、私は息を呑んだ。
白。限りない白。強烈な白のイメージ。
髪は銀髪に近い白。肌もぬけるような白。
瞳の色だけは、うすい緑…それは沼の色を映しただけだったのだろうか?
細すぎる体に、サラリとした麻に近い素材の衣服を緩く巻き付け、どこか異国の国の民のように、頭にも同じ素材の布を帽子のように巻き付けている。
彼は口をパクパクと動かしたけど、残念ながら声にはならなかっった。
ただ、ひゅう…ひゅう…って、小さな風音にしか、私には聞こえなかった。
天使とか、妖怪とか、宇宙の民とか。
人間は古来より、この世のものではない異形のものに憧れを抱く生き物だけど。
そんなものじゃない。
私が彼に出会って初めて抱いた感情は。
だって、彼と瞳があった時、彼が誰かなんて、どうでもよくなってしまったのだから。

私は彼に、恋をしたの。

そして、それは大人になった今でも、変わらない思い…
そう。理屈ではないこの感情を、他にどう言い表せばいいの?

私は、恋に落ちた。