「ごめん、ごめん……」

 例えどんなに振り回されても、快の言動がどんなに目茶苦茶で自己中でも、側にいて守ると誓ったのは瀬奈自身。瀬奈は胸の内でひどく自分を責めた。

 自分は、何て馬鹿だったんだろう。本当に何て馬鹿なのだろう。これじゃ本当に自分が"ストレス"ではないか。

「ごめんね、本当にごめんね、快……」

 馬鹿でごめん。弱くてごめん!

「今度こそ、側を離れないよ。こんな事はもうしないから」

 ポロポロと涙を零しながら、瀬奈はゆっくり快を抱き締めた。

 ――ごめん。快。

 朝の明るい日差しが昼の日差しへと変化するリビングで、快が更に瀬奈を引き寄せ、熱っぽく唇を合わせてくる。瀬奈の茶色で長い髪が、まるでカーテンのように重なる二人の顔をふわりと覆った。



 しなやかな背中が、綺麗な曲線を描く。

 白いレースのカーテン。微かに開かれた唇から漏れる吐息と共に、さらさらと揺れ動く長い髪。

 快の細くて長い、筋張った男の指が、瀬奈の肌を滑る。窓を覆うレースのカーテンが白いキャンバスとなり、瀬奈の美しい肢体を黒く浮かび上がらせていた。

「あ……」

 かすれる声。二人はリビングの床で愛を交わしていた。

 交わすキスの度にゆらゆらと流れる髪。どれくらいぶりだろう――? 久し振りの瀬奈の体温はとても心地よく、快を包んでいた。

「家に……戻って来いよ」

 床の上で、後ろから瀬奈を抱き締めながら快が言った。

「こんな不安なの、耐えらんねー」

 以前味わった、瀬奈のあの冷たい身体を今一度思い出す。大きな不安が快の背中を押していた。

「……な?」

 抱き締める腕に力を込める。

「……うん」

 快の腕の中で、瀬奈が小さくうなずいた。