瀬奈が愛美に快との事を話そうとした時、愛美が先に口を開いた。
「あんた、結奈が彼氏と別れたって知ってる?」
「へっ?」
いきなり話題が変わり、瀬奈は拍子抜けしてきょとんとした。
「そんなの、知る訳ないじゃん」
別にどーでもいーし。
「そーよね」瀬奈の言葉に愛美は納得したようにうなずいた。
「二人で住んでた部屋から、彼氏が出てったらしーわ。どーやら結奈が彼氏の金を勝手に使い込んだみたいで」
はいはい、またですか。
愛美の言葉を瀬奈はスルーした。悪いが今は、そんな事に構っていられない。
愛美が言うには、瀬奈の姉・結奈は父親の"金にだらしないDNA"を濃くひいたらしく、金にだらしない。それが元でこれまでも幾度となく男に去られたり、DVされたりしている。が、同情の余地なしと、瀬奈は全く意に介さず、庇いもしなければ助けてもこなかった。
「別にどーでもいーわよ、お姉ちゃんなんて」
あたしにさえ、迷惑かけなきゃ。
「瀬奈……」
血を分けた姉に対する瀬奈の冷めた言葉に愛美が眉を潜める。「あんたはどーしてそーなのかしらね」
そう言いながら愛美が立ち上がり、キッチンへ向かう。と、瀬奈がまだ片付けずにいた食器の数を見て、何かを察したようにその場に一瞬、立ち尽くした。
「瀬奈!」
愛美が険しい声で瀬奈を呼んだ。その声色の変化に瀬奈も敏感に反応した。
「あんたまさか……ここで快くんと暮らしてるの?」
愛美の言葉に瀬奈はキッチンの食器に気付いたが、もう遅かった。
「まぁ、そうかな」仕方なく、瀬奈はそう、素直に白状した。
「言おうと思ってたとこ。快を一人にしないために、あたしとおじさんたちで協力してるの」
「何ですって……?」
瀬奈の言葉に愛美が怒りの表情を見せ始める。が、それは瀬奈には想定内だった。
「あんた! 高校生の分際で何やってんの!!」
そらきた!!
愛美の言葉を瀬奈はまたもやスルーした。そんなレベルの話ではない。
「まだ十八歳の高校生が男と同棲なんてはしたない!! もっと高校生らしい付き合い方をしなさいっ!!」
元々太い声の愛美が、怒りで声のトーンを上げる。瀬奈は負けてなるものかとでも言うように唇を噛んだ。
「高校生らしい付き合い方!?」
あまりにも偽善的な言葉にちょっとおかしくなる。しかし、瀬奈は沸き起こりそうになった笑みをこらえ、愛美を睨みつけた。