“もちろん”と続けそうになるのをこらえ、瀬奈はそう返事した。“もちろん”をこらえたのは、その言葉が瀬奈の中でとても薄っぺらく思えたからだった。しらじらしいように思え、その言葉を咄嗟に飲み込んだ。

 快がゆっくり、瀬奈の唇に唇を重ねてきた。そのまま瀬奈の髪を撫で、キスが情熱的なものへと変えてゆく。やがて二人は静かに愛し合い始めた。

 二人の愛の営みは現在とても波があり、月に一度あるかないかだったり、そうかと思えば毎日のように交わしたりと、その時により全然違ってきている。

「愛してる」

 病気でとても気が弱くなっているのだろう。快の唇から、初めてそんな言葉が漏れ、瀬奈は驚いた。

 “愛してる”

 快の性格やキャラクター的に、普段なら絶対に言わないであろうその言葉。しかし同様に、瀬奈もその言葉を口にした事は今まで一度もない。

「あたしも……愛してる」

 戸惑いと照れくささの中、瀬奈も初めてその言葉を口にした。言わなければならないと思った。二人は何度もキスを繰り返しながら、ゆっくりと愛を確かめた。

 瀬奈の指が緩やかな動きで快の背中をなぞると、その指に棘突起が触れた。その感触が意味するものをしっかりと感じながらも、快との愛の行為に瀬奈は意識を集中させた。

 快が与える快感に応えるように、瀬奈も快に快感を返す。二人は長くゆっくり時間をかけ、互いに快感を与え合い、闇に沈んだ。