さっきからそんな後悔の言葉しか浮かばない。
――風の強い場所。
電話から聞き取れた小さな情報を元に必死に考える。快の行きそうな場所……あ!
突然、ある答えが導き出される。瀬奈は車に乗り込むと勢いよくエンジンをかけた。
「瀬奈ちゃんから連絡は?」
帰宅するなり、耕助は紗織にそう言った。
「いえ、まだ何も。爽もさっき探しに出たわ」
「そうか」
紗織の腕の中では優月がスヤスヤ寝息をたてている。耕助はじっと優月を見つめ、情けなさそうに顔を歪めた。
「一体何が……」
「……判りません。最近ずっと調子よかったから、あたしも油断していたわ」
「いや、俺もだ」
「あ……うああ」突然、優月が目を覚まし、泣き始める。
「あら、もう三時間経つの? よしよし、お腹が空いたね。お父さん、ちょっと抱いてて、あたし、母乳を解凍してくるから」
「えっ……? ああ」
少し驚いた顔の耕助の腕に優月を渡し、紗織がいそいそと冷蔵庫に向かう。紗織は冷凍室から瀬奈の母乳バッグを取り出すと解凍し始めた。
――瀬奈ちゃんと爽、快を見つけられたかしら……。警察に捜索願を出した方がいいかしら。
「快!!」
叫ぶような瀬奈の声が、強風の海岸に響き渡る。
「快!!」
快が瀬奈からの電話を受け取ったあの海岸に、瀬奈はいた。
真っ暗闇の海に人気はない。瀬奈は辺りを見渡しながら、快の名を叫び続けた。
「か――い!!」
風と波の音が瀬奈の叫び声をあっさり闇に消し去るが、瀬奈は何度も何度も、快の名前を呼び続けた。
――どこにいるの……? ここじゃないの?
自分の周囲を三百六十度見渡してみるが快の姿はない。
ここだと思ったのに……。