メール画面を開き、隼人と偶然会った事と併せて彼への質問を書いて送信する。すると夜遅いにも拘わらず、すぐに返事がきた。


【あくまで噂だけどね。山科くんの凄く仲のいい従兄の彼女が今年に入ってからうつ病になったとかで、神童くんの事があるから、受験生にも拘わらず、山科くん、献身的に相談にのってあげてたらしいんだ。けどその彼女、自殺願望が凄かったらしくて、毎日のようにリスカしては、その縫合跡を彼氏である従兄さんに見せてたみたいで……。そしたら……さすがにその従兄さん、耐えられなくなっちゃったんだろうね、最近、別れちゃったんだって。そしたら……その彼女が自殺しちゃって……。】


 ――自殺!!

 そこまで読んで、瀬奈は思わず上体を起こした。瀬奈はアドレス帳を出すと今度は菖蒲に電話をかけた。

「もしもし夜中にごめん」

「ううん」

 テレビでも見ていたらしく、電話の向こうが少し賑やかい。瀬奈はベッドに座り、壁にもたれ、ズバリ聞いた。

「その彼女……亡くなったの……?」

「ううん。一命は取り留めて今は隣町の精神科に入院中」

 菖蒲の言葉に安堵する。しかし、先程読んだ衝撃的なメールには、姉の結奈が殺されたと知った時よりも動揺していた。

「山科くんは……?」

「従兄さんが彼女の自殺未遂の責任をひどく感じてるみたいで、山科くんも二人の力になれなかった事に責任感じてるらしい。山科くん家とあたしん家、近所だから、たまにその従兄さんと山科くんが一緒にいるとこ見かけてたんだよね。最近ぱったり見かけなくなったけど」

「噂のわりに、凄く……詳しいね」

 菖蒲からの詳しい情報に少し驚いて瀬奈が訊き返すと、電話の向こうで菖蒲がうなずいた気配がした。

「まぁね……。近所だからさ。一部はうちの母親からの情報だけど、後は……やっぱ噂。公園やゴミ収集所、保育園やスーパーの駐車場とかでおばちゃんたちが井戸端会議やってる。サイテーだよ」

 ――噂……。

 "サイテーだよ"

 菖蒲の口から吐き捨てられた言葉が瀬奈の胸を強く打つ。

『悪いけど俺が同じ立場なら……きっと見捨ててる』

『きっと支え切れねー』

 ――そうか……。

 うつ病患者の症状は全員が同じ訳ではない。その症状には個人差がある。現在のところ、快はリストカットをしていないが、リストカット等の自傷行為を繰り返す人もいる。