肩からシャワーを浴びながらふっと息をつく。瀬奈にはさっきの快の一連の行動や言葉が、どうしても腑に落ちず、胸にほんの少し、不快感を残していた。
――離れたくない。
一人になったベッドで、快は天井を見上げながら、瀬奈を想っていた。
――瀬奈と離れていたくない。
ほんの少しの間、瀬奈が側にいないだけで心がさわつき、落ち着かなくなってくる。
――ずっと側にいたい。繋がってたい。
さっきまで瀬奈がいたシーツが、残っていた温もりを容赦なく解き放ってゆく。肌でそれを感じ取った快は体を起こすとそのまま立ち上がり、何も身に着けず、バスルームに向かった。
「早く来いよ」
脱衣所のドアを開け、タオルで体を拭いていた瀬奈を強く抱き締める。
「寂しい……」
彼は甘えた声でそう言うと、シャワーを浴びたばかりの瀬奈をその場に押し倒した――。
「えっ……?」
月曜の夜、仕事帰りに快を見舞い、その足で菖蒲と会った瀬奈は、迷った末、彼女に週末の快の様子を話した。
「じゃ、お母さんたちが帰って来るまでずっとベッドに?」
「……まぁ」
パスタをフォークに巻き付けながら瀬奈が呟くと、菖蒲は向かいの席で腕組みをし、小さく唸った。
「……ね、神童くんって、その……絶倫? あ、病気になる前」
「ううん!」菖蒲の質問に瀬奈は即座に首を振った。
「基準判んないけど多分、普通だよ。それにベッドにいただけで、ずっとしてた訳じゃないし」
「そっか」
菖蒲はフォークをハンバーグに突き刺したまま、天井を見上げた。
「病気になってからは性欲にかなり波があって、毎日の時もあれば、平気で二ヶ月くらい開いたりしてたんだけど、一日の内に何回もってのは病気になる前もなかったからさ、びっくりで……」
「ふ~ん、じゃ、やっぱ病気のせい?」
「多分」
そう言うと瀬奈はウーロン茶を一口飲んだ。
――多分、病気のせい。
ゆっくり食事しながら記憶を辿る。
あの日、脱衣所の床で再び愛を交わした後、二人は夕方までずっとベッドにいた。そして夜中、快は静かに瀬奈の部屋を訪れ、そこでもまた、愛が交わされた。