嫌だ、怖い! 怖い!!

 快は必死に瀬奈にしがみつき、やがて体を震わせ始めた。

 ――怖くて心臓がバクバクする。

 不安で心拍数が上昇し、額に油汗がにじんでくる。何かに触れていないと本当に押しつぶされそうで怖かった。

「快、快……」

 すっかり暗くなった部屋のダブルベッドの上で、快が更に瀬奈にしがみつく。

「快、落ち着いて、大丈夫、大丈夫だよ」

 呼吸を乱している快に瀬奈が声をかけ続ける。

 ――俺、このまま死んじゃうのかな……。

 時に望んでいるはずの"死"への恐怖が、更なる不安を呼ぶ。この暴走的な感情はもう誰にも、快自身にも止められなかった。

「何か……あたしにできる事ある?」

 背中をさすり続けながら瀬奈が言った、快は瀬奈の服を握り締め、呟いた。

「……側にいて」

 ――俺が、つぶれちまわねーように……。

「うん……」

 うなずいた瀬奈が、しっかりと快を抱き締める。

 ――墜ちる。

 目を閉じた快は、不安という大きくて深い穴の中へと背中から墜ちていった。