顔は長い髪で隠れて見えない。 だからどんな表情をしているのかはわからない。 「先輩?」 「………。」 小刻みにふるえている先輩をなだめようと、そっと手を伸ばし先輩に触れた瞬間。 ビクッ 「………ッ!」 先輩はビクリと大きく震えた後、俺から離れた。 …俺、先輩を助けた側の人間なんですけど。 なんでそんなに、ビクビクされないといけないわけ? 収まりかけていた苛立ちが、再発してしまった。 なぜ再発したのかはわからない。 ただ、目の前のこの人に怯えられていることが、無性に腹が立って仕方ない。