無事に球技大会の1日目を終えた伊織は、何をするでなく公園でぼーっとしていた。
空いているブランコに座り、夕焼け色に染まる空を静かに見つめる。
“黄昏ている”
なんて言えば聞こえは良いが、伊織の場合はそんなに綺麗なものではなかった。
先程からずっと。
伊織は昔の思い出に浸っていた。
大好きだった彼との、掛け替えのない大切な思い出。
もうあの時には、戻ることはできない。
分かっていても、解っていても。
それでも思い出してしまう。
“新しい恋、した方がいいよ”
“その方が身のためだよ?”
仲の良い友達は、みんなそう言って励ましてくれた。
伊織自身も、そうしようと努力した。
しかし、大体はこう言われて別れるのだった。
“君は、僕じゃない誰かを見ている”
“面影を重ねるのは止めろ”
慰めてくれる人もいた。
しかし、貶されて嫌がらせを受けることの方が確実に多かった。
「……何で、逝けないの」
誰も居ない公園に、伊織の小さな呟きは泡となって消えていった。
答えてくれる人なんか、いる筈もなくて。
あの人に会いたくて。
夢の中でしか会えない、あの人に会いたくて。
もう何度、この場所を訪れたか解らない。
「来ても会える筈、無いのに」
そっと呟いて、伊織はその場を立ち去った。
