届けたい想い



「格好…良い…」


伊織は素直に、そう思った。
みんなで協力して、それが成功して喜び合う。

そんな当たり前の事が、何故か格好良いと感じた。


「うん、何か言った?」

「独り言」


意味深に微笑んでそう誤魔化した伊織は、またすぐにコートの中に目を戻したのだった。





『では、次の競技は―…』


アナウンスと共に、バドと言う単語が流れてくる。

伊織は雪架に促され、第1コートに向かった。


「体力、問題無い?」

「当たり前」


先程までバスケをプレイしていた健斗に問えば、本当に余裕そうに返答された。

流石現役運動部、とでも言うべきか。
息ひとつ乱れていないため、伊織は密かに感嘆の溜め息を漏らした。




『それでは、第1コート試合を始めてください』


第1コート。
どうやら一試合目に伊織が戦うらしい。



各々挨拶を交わし、じゃんけんで先攻後攻を決める。
健斗が勝ったため、伊織達が先攻になった。


「柏木、落ち着けば大丈夫」


サーブ直前にそう囁かれ、緊張していた伊織はなんとか平常心を保ってプレーすることができた。


結果は2-1で勝利し、次の相手が決まるまでの休憩をとることにした。


「伽藤君、タオル!」

「水分補給の水!」


体育館脇に腰を下ろすと、瞬く間に女子の大群が寄ってきた。

それを避けるように健斗から距離をとる伊織。
それに気付いた雪架が、ここぞとばかりに走ってきた。


「伊織、格好よかったよ!」

「惚れんなよ?」


何となくノリでそう答えると、態とらしくふらついた雪架。

回りからしたら“何だこいつら”としか見えないこの状況。
二人はそれなりに楽しんでいた。


「にしても、球技大会って性格出るよね」

「そうだねー」


半ば棒読みで返され、雪架は笑顔で両頬をつまむ。


「いひゃい。はにゃして」


無表情の伊織に対して、雪架は何故か興奮ぎみだ。

何があったかはさておき、雪架が楽しそうだからそれで良いと閉めた伊織だった。



「柏木、次試合」

「了解」


短い休憩のあとすぐに試合に出ることになった伊織と健斗は、急ぎ足でコートに向かった。