届けたい想い



「……友達に?」

「そう、友達」


キラキラした笑顔を向け、駄目?という風に首を傾げる。

そんなことはない。
慌ててそう言った伊織に、雪架は安心したように微笑んだのだった。






雪架と友達になって1ヶ月が過ぎようとしていた頃、クラスは既に球技大会モード一色となっていた。

クラスで統一したTシャツの柄を考えたり、出場競技を決めたりしている。


一人一競技は必ず参加しなくてはいけないため、運動全般が嫌いな伊織は何に出るか悩んでいた。


「…バドとかなら出来る」

「ダブルスみたいだし、ペア組む?」


競技表に目をやりながら伊織が呟くと、それを聞き付けた雪架が目の前に現れた。

確かにダブルスとは書いてあるが、読み間違いでもない限り男女ペアとなっている。
運動神経的な問題で、平等を目的とした措置であろう。

しかしながら、何故男子と組まなくてはならないのか。
運動神経の良い女子と組めば良いだけではないのか。


「バドに出る人、くじを引くので集まってください」

「…くじ引きで決めるの?;」


そんな疑問を持ちながらも、取り敢えず実行委員に従ってくじを引く。
出た数は“5”。

同じ番号のくじを持っていたのは、隣に立っていた“伽藤 健斗”とか言う男子。


「あっ健斗君、番号何番だった?」


すぐに周りに集まってくる女子の群れ。
伽藤健斗といえば、この学年知らない人が居ないのではないかという位有名だった。

“冷血”“無愛想”“クール”“寡黙”“怖い”

等々、暗い雰囲気を漂わせていることで有名な、あの伽藤健斗。


健斗が女子に質問攻めになると同時に、伊織は雪架に質問を受けた。


「番号何番だった?」

「「5番」」


何となくで答えた伊織の声に、誰かの声が重なった。
誰か、とか言う前に、健斗以外有り得ないわけだが。


「あ…あら、柏木さん」

「良かったわね」


既に鬼の表情の女子の視線を逃れるように、雪架の後ろに隠れる。

それに気付いた雪架が、心配そうな表情で声を掛けた。


「大丈夫、伊織?確か男子苦手って…」

「…苦手って訳ではない」


少し青い顔をしている伊織の横顔を、雪架は静かに見つめていた。