「君と・・・私の平行世界?」

「そう。千沙の周りには色んな人がいるでしょう。その誰でも一人ずつと、他のたくさんの平行世界がある。千沙の世界では僕は人形だけど、そうでない関係を持ってる世界が、他に6つあるってことなんだ。今のところは、だけどね」

 つまり――――――混乱しつつある頭の中で、千沙は懸命に言葉を考えた。

 私と、父。私と、母。それとか・・・この前振られた、彼。皆との平行世界も私にはあって、それぞれ複数の世界が存在しているってことだろうか。ピノキオとは、とりあえず6つ、今の時点で関係を持っている世界があるということ?

 彼女はまた眉間に皺を寄せて唸った。悪態をつきたい気分で、目は無意識にタバコを探す。

 それを見て前でピノキオが笑う。

「ふふふ・・・判ったような判ってないような顔、だね・・・。千沙、どうする?」

 何が?彼女はパッと視線をピノキオに戻した。二人はまだ両手を繋いだままだったので、ピノキオは視線で最後のドアを示す。

「あそこ、行く?それとももう自分の時間に戻る?」

「うーん・・・」

 実際のところ、どうでも良かった。ドアを開けてからいきなりその世界の「自分」を体験し、何かの拍子にまたここに戻ってくるのは気分がいいものではない。