「もう・・・夕方?」

 隣から間延びした声がして、彼女はゆっくりと目を覚ました。途端にズキンと頭が痛み、苦い味が口の中を満たすのに気がついた。

「・・・おえ~・・・」

「もう、千沙ったら」

 隣からは苦笑する、低い声。彼女はブルーのシーツの中でごそごそと回転をして、彼に微笑みかける。

「・・・二日酔いは、ほんと頂けないわね」

 ああ、全くだね。彼もそう言って頷く。

 昨日は二人が付き合いだして1000日目の記念日だったのだ。そんなわけで、夜明けまで飲む理由があるといって、馴染みの店へ二人で繰り出して、本当に始発までを飲み明かしたのだ。

 最初は出会いから、それぞれの印象、嬉しかったこと、実は嫌だったことなどを話していて、料理をいくつか取りながらお酒を楽しんでいた。それがいつの間にか上司の愚痴から遠い未来への大きな希望の話まで飛躍して、最後の方はわけも判らずにただぎゃあぎゃあと騒いでいただけのカップルだったのだ。

 ああ、腹が減った・・・そう言って彼は起き上がる。眠るときに裸でいるのは、彼のクセだった。下着だけをパッと身につけて、彼は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し大きく煽った。

 細身ではあるが筋肉質な綺麗な体がゆっくりと動く。千沙はそれをシーツの中から嬉しく眺めていた。

「飲む?」

「飲む飲む~」