「良かった。もしかして道に迷ってるのかと思ったよ」
そんな私にニッコリと笑って、安堵の溜息を吐いた男性
その無防備な姿を見て、思わず首を傾げた
――ん? なんで私が迷子になるの?
「何度か携帯に電話したけど、出ないから心配してたんだ」
「・・・電話?」
なんだか状況が読めないぞ?
何言っちゃってんの? この人
もしかして、人違い?
いや、でも私の名前知ってるし…
ますます目の前の男性が怪しく見えてきて、上から下まで舐めるように見つめる
真っ黒のスーツに
ピカピカの革靴
胸元に金色の名札が付いている
じっと、その名札を睨む様に見つめて、字を読み取る
おおにし...けいた



