「大丈夫か?」
必死にハシゴに掴まりながら、昇ってくる瀬川に手を伸ばす
すると、強ばっていた顔をゆるゆると弱めた彼女
「主任っ」
くりくりの瞳を細めて、嬉しそうに俺に手を伸ばす、小さな手
力強く握りしめて、勢いよく持ち上げた
「あ~もう、落ちちゃうかと思いました」
「ここから落ちたら、下手したら死ぬな」
「怖い事言わないで下さいよっ!!! 降りれなくなるじゃないですかっ」
ケラケラと笑う俺を見て、子供みたいに口を尖らせる瀬川
その姿を横目に見ながら、その小さな手を掴んで足を進める
俺の隣に並んだ瀬川が、目の前の景色を見て嬉しそうに声を上げる
「今年の桜も、綺麗ですねっ」
真っ青な空の下
舞い上がる桜の花びらの中に、瀬川の笑顔が零れる



