そんな日々の中、ふと気が付いた事があった
自分で決めた事なのに、彼女を避ける様になってから
今まで俺の生活の中にあった瀬川の表情が消えた途端
何故か、ぽっかりと穴が開いた様に心が寒くなった
事務所を必死に駆け回る姿
朝早くから、夜遅くまで働く姿
いつの間にか、無意識にその姿を追っている自分がいた
ふとした時に絡む視線
その度に、はにかんだ様に微笑む瀬川
ゆっくりと、ゆっくりと
氷を解かす様に、瀬川が俺の心の中に入ってきた
徐々に薄れていく、悠理さんの俺を呼ぶ声
それに重なる様に、聞こえるのは
明るく無邪気な声
「――瀬川」
耳の奥で響くのは、眩しい程の瀬川の姿
俺に駆け寄る、どこか幼い笑顔
――自分の心に芽生えた想いに気付いた時は、正直驚いた



