「あの頃の瀬川は、俺にとって眩しすぎる存在だった」
そう言って、バージンロードに咲く薔薇に指を添えた主任
その余りにも端正な横顔に、思わず見惚れてしまう
そんな中で、主任と初めて出会った日の事を思いだした
――主任に出会った頃は、右も左も分からない、まだまだ学生気分の抜けない新入社員だった私
先輩達についていく事や覚える事に必死で、毎日全力疾走だった
「飾らない瀬川の言葉や態度に、正直救われた。久しぶりに笑えた様な気がしたんだ」
そう言って、ふっと小さく笑って私を見た主任
その大人びた表情に、一度大きく胸が跳ねた
「でも、それ以上には見れなかった」
「――部下...ですか?」
「あぁ」
少しだけ間を置いて頷いた主任を見て、ズキンと胸が痛む
分かっていた事だけど、いざ真正面から言われると胸が痛い
そんな私を置いて、再びゆっくりとバージンロードを進む主任
そんな中、その両端に添えられた薔薇達を1つ1つ、その手に束ねて行く主任
まるで、思い出を1つ1つ取り上げる様に
「告白された時も、その気持ちは変わらなかった。いつまで経っても、変わらず俺は夢の中で生きていた」
「――」
「きっと、現実を見るのが怖かったんだろうな。思い出の中で、俺は生きてきてたから」
藍原さんと過ごした日々の中で生きてきた主任
もう二度と増える事のない思い出を、大切に大切に守ってきたんだ
藍原さんとの、軌跡を



