どこか寂しげな横顔が淡い光の中に浮かびあがる
なんて言っていいか分からずに、ただじっとその姿を見つめた
「よく、莉奈さんにも言われたよ」
「え?」
「あんた、笑わなくなったねって」
「――」
「狂ってしまいそうな世界の中で、いつの間にか本当に笑う事もできなくなってた」
その言葉に、涙が出そうになる
主任の藍原さんへの気持ちの大きさに対してか
それとも自分と重ねての想いか
それは分からないけれど
ただ、胸が締め付けられた――
心から愛した人の結婚
自分ではない男の人との子供
そして、愛する人の旦那は自分の上司――
狂わない人はいない
きっと誰も悪くない
ただ、出会うのが遅かっただけ
そんな、どうしようもない世界の中で
主任はずっと生きてきたんだ
「会えない日々が続けば続く程、想いが積もって、壊れてしまいそうになる。忘れられたら、どんなによかったか――」
「――主任...」
それでも、忘れられないのは
本当に好きだったから
ううん。
愛していたから



